ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感④

こちらのエントリーからの続きです。

 

①については、指摘のとおりであると思う。しかし、大阪地裁も指摘しているとおり、税法等の私法以外の法律分野では当事者の合意では解決できない差異が残っている(例えば、配偶者控除の可否は当事者の合意で解決できるものではない)。異性愛者と同性愛者の間で生じる法律関係等の不均衡の問題は、この当事者の合意では解決できない差異の評価であり、かかる差異によってどのような具体的な不利益を同性愛者が被っているのか、この点を論じるべきであるのに、大阪地裁はこの点は十分に論じていない。

 

②については、これが問題の本質ではないだろうか。この訴訟で当事者が求めているのは、もちろん法律婚による生じる法律上の利益(例えば、分かりやすいところでは上記の配偶者控除等)も含まれているだろうが、その核となるのは、法律婚による生じる公認に係る利益ではないだろうか。愛する人と結婚することができないことから生じる精神的な苦痛、社会から向けられる批判的なまなざし、これらの公認に係る利益を享受できないことによって生じる不利益がどの程度なのかをより詳細に事実認定した上で、日本社会が急速に変化している中でこのような精神的苦痛を被っているマイノリティを救済する必要性が高まっていないのかを国際的な情勢を考慮して、緻密な利益考慮をして欲しかった。しかし、大阪地裁の判決には、この肝となる公認の利益を享受できないことによる不利益についての検討が十分ではないように思える。