ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感⑤

③については、議論がずれてしまっているように思う。確かに、公認に係る利益を認めるための法的枠組みについては様々なものがあり、民主的な過程で決めるべきことであろう。しかし、本件の本質的な問題は、法律婚ができないことにより生じている公認に係る利益を享受できない不利益がどの程度大きいのか、という問題である。したがった、公認の係る利益を認めるための法的枠組みが様々あるということは、この不利益を憲法上正当化する理由にはならない。すなわち、民主的な過程で決めるべきという理由付けは、同性婚を認めない民法等の規定が合憲であることの説得的な理由付けにはなっていないと言わざるを得ない。

 

以上が私の大阪地裁に対する私見である。冒頭に述べたとおり、社会的な風潮に流されず自らの判断を下したこと、さらに札幌地裁とは別の判断をして議論が深まる契機となることから、この判断自体が間違っているとは言えない。しかし、中身を見てみると、当事者が被る不利益を丁寧に認定し、マイノリティの人権保護という裁判所に課せられた使命と正面から向き合って欲しかった、という気持ちを持ってしまうのが正直なところだ。

先に出た札幌地裁も、今回の大阪地裁も敗訴側から控訴がされ、上級審で争われるであろう。最高裁にまでいくのであれば相当程度の長い闘いになるであろう。私個人としては、その間に国民的な議論が深まり、国会自らこの問題を解決していくことを願っている。