ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

司法試験におけるPC使用解禁の寄せて

司法試験がついにPC利用を解禁するらしい。腱鞘炎になりつつも答案を作成していた世代からすると隔世の感がある。確かに、ペンで長い訴状・契約書etcを書くことなんて決してない時代であるので、PC利用を認めるのが当然であろう。そういえば遠い昔に受験したNY州の司法試験でもPC利用は認められていたし、米国では10年(若しかしたら20年)くらい前からPC利用が認められていたのではないか?

 

他方、PC利用が解禁されると求められる答案の質も上がるように思う。手書きではどうしても記述量に限界があり、それが答案の標準化に繋がっていたように思う。すなわち、手書きでは、「本当は書きたいことはまだあるが時間の関係上致し方なく削る」ということが頻繁に起こっており、最良の答案でもすべてを書き切っていることはなかったのではないか?PC利用が認められると、規定時間内に記載できる量も飛躍的に大きくなるので、上記のような事態が生じにくくなると思われる。その結果、受験生の実力がより如実に表れるのではないか?

 

いずれにせよこの変更が司法試験受験生を増やす良い方向の改革になって欲しい。私としては弁護士の仕事の魅力にもっと多くの人に気づいて欲しいのだ。

 

弁護士は規制産業であるので、他業種よりも競争が限定的だ。これが他業種よりも高い単価が正当化される理由である。例えば、弁護士業界に近いコンサル業界を見て欲しい。コンサル業界は強い需要に引っ張られ、採用を増やし、供給量を増やそうと躍起になっている。P●Cの痺れる程格好いい動画広告は人手がひっ迫している証左だろう。

 

しかし、皮肉なことに、これが逆にコンサルのコモディティ化を進めている。10数年前には考えられなかったようなプライスでビジネスコンサルが利用できる時代になっている。もちろんTier 1のコンサルは未だに高いプライスを維持できているが、顧客もTier 1のコンサルを利用する場面は少ないことを認識し始めており、Tier 2以下若しくはTier 1出身者が立ち上げた新興ファームに案件を依頼する機会が多い。BDDでもMBBが登場する機会が明らかに減った。

 

他方で、弁護士も着実に人は増えてはいるものの、供給される人数が他業界に比べて圧倒的に限定的だ。M&A法務はコモディティ化されており、Tier 2又は四大出身の新興ファームに流れると言われ続けているが、その流れは想定以上にスローだ。このような事務所では人手が足りず大規模案件を受任することが難しいからである。したがって、弁護士業界は未だにHigh Priceを維持できているし、何なら毎年少しずつ単価は上がってきている。

 

ご存知のとおり、更にM&A法務がコモディティ化していると思われる米国では、初任給が20万ドル(日本円で2400万円(!!))の大台を超えている。日本の法律業界もここまでとは言えないが、今後もタイムチャージは伸び続ける可能性が高い。実際に某四大事務所の友人によると、勤続5年超で2や3を超える金額をもらっている人もいるらしい。ちなみにコンサル業界では5年目のアソシエイトの給与はその額に遠く及ばない。もしかしたら外銀ではボーナス次第ではそのレベルに達するかもしれないが、それでも数年に1回あるかないかだろう。私のような中小規模の企業法律系の法律事務所でも1は優に超えている。

 

上記では企業法務の話をしたが、やはり儲かるのは地方での独立開業だ。私は登録10年前後だが、地方で成功した同期の話を聞いていると豪商感がある。●百坪の庭付き一戸建てを保有し、車はベンツ、夏はBBQに冬はスキーにと、、、羨ましい限りだ。

 

私はお世辞にも頭がいい人間とは言えない。大学の同期は私よりも遥かに優秀であった。それにも関わらず、私が人並み以上に稼げているのは弁護士という資格で守られている職業についているからである。当たり前であるが、競争が激しいところに行ったらリターンも大きいが、リスクも大きい。死屍累々の屍の上に少数の成功者がいるだけだ。それであれば、リターンも中程度であるが、リスクも中程度の競争が激しくない業界の方が期待リターンは高い。弁護士業界はまさしくそのような業界だ。リターンは中程度といっても若くしてFIREするくらい、若しくは、地方で豪商ができるくらいのリターンは見込める「美味しい」職業だ。ちなみに、一般的に尊敬されるのも小さな自尊心を満たしてくれる。

 

ということで、司法試験にためらっている方がいれば是非この業界に飛び込んで欲しい。基礎学力がある方であれば、ロースクールに行って真面目に勉強すれば、ほぼ確実に合格できる試験になってきている。動くのであれば不人気な今がチャンスだ。