ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

司法修習生は何を勉強すべき?各論(2022年版):留学希望者はやっぱりTOEFL

このエントリーの更に各論: businesslaw-diary.com さて、留学を経験した弁護士が上級者ぶって(全く上級者ではない)、これまでの失敗を踏まえて、英語の勉強方法について書いてみたい。 まずは留学を目指している人に対してのアドバイスから始めたい。こ…

司法修習生は何を勉強すべき?各論編(2022年版):英語の話す聞くを勉強すべき

昨日のエントリーの各論: businesslaw-diary.com 昨日は修習生は勉強をする習慣をつけろ、と偉そうに述べた。ただ、それだとあまりに抽象的なので今日のエントリーでは私がおすすめする勉強科目をお伝えしたい。 まずは、英語、特に話す聞くの英語だ。私は…

司法修習生は何を勉強すべき?総論編

最近話題になっている修習生は何を勉強すべきという質問に対する私なりの回答について少し書いてみたい。修習生時代なんて(遠い目…)という感じではあるが、実務に怯えていた当時の自分を思い出し、当時の自分にかけてあげたい言葉を考えてみる。 まず、印…

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任④

昨日のエントリーの続き: businesslaw-diary.com さて、今日は役員等賠償責任保険について書きたい。会社法は役員等賠償責任保険契約について締結手続き(例えば、東電の場合は取締役会の決議が必要)を定めているにとどまり、その具体的内容は保険会社と会…

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任③

昨日のエントリーの続き: businesslaw-diary.com 今日は、5.会社との間の補償契約について考えてみよう。会社との間の補償契約とは、(1)取締役の訴訟等対応費用、又は(2)取締役が第三者に対して支払う損失額や和解額を会社が負担する約束のことである…

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任②

昨日のエントリーの続き: businesslaw-diary.com まずは3.取締役会の決議に基づく責任の一部免除について検討したい。これは定款に「取締役会の決議がある場合には取締役の責任を一部免除できる」との規定がある場合に、取締役会の決議により取締役の責任…

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任①

東京地裁は、福島第一原発の事故に関して、東電の旧経営陣に対して合計13兆3000億円の支払いを命じる判決を下した。この判決は、東電の旧経営陣に対する民事上の責任を認める始めての判決であることはもちろんのこと、その13兆円という莫大な損害賠償を認め…

開示資料から考えるツイッター社買収合意の解除の可否③

以下の昨日のエントリーからの続き。今日は少しだけここまでの議論をまとめてみたいと思う。 businesslaw-diary.com さて、以上の分析からすると、仮にツイッター社がスパムアカウント等の情報をマスク氏に提供していないとすると、実は法律論的にはマスク氏…

開示資料から考えるツイッター社買収合意の解除の可否②

今日は毎日の以下のエントリーの続きを書きたい。 businesslaw-diary.com 情報提供義務違反で争うのが難しい場合、ツイッター社のさらなる防御を考えられないだろうか。一つ考えられるのが、契約違反はあるが、解除事由には該当しないという主張だ。本解約通…

開示資料から考えるツイッター社買収合意の解除の可否①

イーロン・マスク氏のツイッター買収提案の撤回が話題を呼んでいる。 マスク氏とツイッター社は、今年の4月25日、マスク氏によるツイッター社買収に合意していたが、報道によると、マスク氏はこの合意の撤回(解除)をツイッター社に通知したとのことだ。今…

ソーシャルメディアから考える参院選⑤

NHK党については、ちょっと凄すぎて表現が難しい。まずは今回の選挙についていうと、ガーシーこと東谷義谷氏がNHK党から出馬して当選したが、東谷氏は約28万票を獲得しており、これは参政党の神谷氏の15万票を大きく上回る。東谷氏のメインの視聴者が40代・5…

ソーシャルメディアから考える参院選④

続いては参政党である。参政党はYoutube、Twitterではなく、TikTokで人気を獲得したという報道が多い。実際にTikTokで参政党のハッシュタグがついている動画の総再生数は9700万回程度であり、驚異的な数字となっている(参考までにごぼうの党のハッシュタグ…

ソーシャルメディアから考える参院選③

ごぼうの党と言えば、多くのインフルエンサーとのコラボだろう。筆者が調べた限り、ごぼうの党がコラボを行ったインフルエンサーは以下のとおりであり、総計すると500万回再生を超える。一部視聴者が重複しているとはいえ、相当な数字である。 インフルエン…

ソーシャルメディアから考える参院選②

今回の検討では、特に今回の選挙で話題になった参政党、NHK党及びごぼうの党を中心に、比較対象先として、SNSに力を入れていると言われている国民民主党をピックアップした。 まずは比例の獲得議席数、政党得票数と各SNSの登録者数を、党ごとにまとめてみた…

ソーシャルメディアから考える参院選①

悲喜こもごもの参院選の結果が出た。自民公明は過半数を参院でも確保し、維新等を含めた改憲派の政党が3分の2を超えたらしい。今後改憲に向けて議論を進めるとのニュースが早速流れている。法律家として改憲に関する自分の考えをいつかまとめたいと考えてい…

「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月」の雑感⑤

こちらの本の話の感想 [http://:title] [http:// 決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月 [ 秋場 大輔 ] 楽天で購入 :title] 最後にコーポレートガバナンスについても少しだけ。LIXILグループでは、少数株主であるが創業家の一人である潮田氏の影響力…

「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月」の雑感④

こちらの本の話の感想の続き④ [http://:title] 潮田氏サイド/会社サイドの人間もあたかも卑怯なことに手を染めているような記載ぶりであるが、そのような人たちの一つ一つの行為はそこまで大きな問題ではなく、また、潮田氏/会社の立場に従わなかったら、将…

「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月」の雑感③

こちらの本の話の感想の続き③ [http://:title] さはさりながら、事実は概ねこの本に記載されているとおりなのだろう。私自身も弁護士の端くれとして、このような経営権争いに関わったこともあるが、あまりの迫真の描写に当時を何度も思い出させられた(関係…

「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月」の雑感②

瀬戸氏サイド及び潮田氏サイドのいずれの側面から記載してており、緻密な取材を基に執筆されたのだろう。しかし、瀬戸氏・潮田氏の争いを勧善懲悪物にしようとしている意思があるのか(そのようなストーリーにしなければ売れないという事情もあるのだろう)…

「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月」の雑感①

今日からは話題の新刊「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月」を読んだ感想について書きたいと思う。 [http://:title] 著者は記者の秋場大輔氏。インターネット情報によると、秋場氏は日本経済新聞社で電機、商社、電力、ゼネコンなど企業社会を幅…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感⑤

③については、議論がずれてしまっているように思う。確かに、公認に係る利益を認めるための法的枠組みについては様々なものがあり、民主的な過程で決めるべきことであろう。しかし、本件の本質的な問題は、法律婚ができないことにより生じている公認に係る利…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感④

こちらのエントリーからの続きです。 ①については、指摘のとおりであると思う。しかし、大阪地裁も指摘しているとおり、税法等の私法以外の法律分野では当事者の合意では解決できない差異が残っている(例えば、配偶者控除の可否は当事者の合意で解決できる…

平本蓮選手 - カリスマ性と努力を兼ね備えた稀有なアスリート

閑話休題で、平本蓮選手について書いてみたい。なお、私はいわゆるにわかファンなので、にわかファンからの目線ということで見て欲しい。 平本蓮選手を知ったのは、多くの人と同様、2020年の大晦日の萩原京平選手との試合からである。彼の強気の発言、K1での…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感③

さて、大阪地裁が立法裁量の中で何を論じているかというと、 ①法律婚の配偶者間の法的権利義務等は、事実婚のパートナー間の法的権利義務等と異なるが、事実婚のパートナーも当事者間の合意で、一定の範囲においては、同様の法的権利義務等を実現できる ②そ…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感②

他方で、内容を見ると、少しいただけないところが多い。まず判断枠組みが憲法論として違和感を感じる。大阪地裁は大きく分けて、①婚姻等の制度は法律において定めることを規定した憲法24条2項、②平等権を定める憲法14条1項との関係で、同性婚を認めないこと…