ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

国内時事

JIPによる東芝に対する公開買付けに関する契約の雑感②

4.表明保証 5.取引保護条項 6.終わりに 大分時間が経ってしまったが、JIPの東芝に対する公開買付けについて筆を進めていきたい。 前回はこちらから businesslaw-diary.com 4.表明保証 表明保証についても予告プレスには記載されている。JIP側の表明保証…

オイシックスによるシダックスに対する異例な公開買付け③ - コロワイドによるフード関連事業の買収提案

はじめに 日経の記事:コロワイドによる買収提案 ユニゾンによる応募方針の公表 シダックスの反応 今後の見通し はじめに シダックスの件で新たに続報が出ましたので今日は少しだけこの件について書きたい。これまでのシダックスの件のエントリーはこちらか…

オイシックスによるシダックスに対する異例な公開買付け② - シダックスの反対意見表明

はじめに 反対意見で判明した新たな事実を踏まえた本件の経緯 シダックス取締役の反対理由 ①A.について ①B.について ②について まとめ ユニゾンが主張するインサイダー取引の該当可能性 決定の有無 撤回の有無 公表の有無 小括 今後の見通し 終わりに はじめ…

3D Investmentの富士ソフトに対する臨時株主総会の請求に関する法的論点について思いつくままに書く

はじめに 現段階での論点:臨時株主総会の招集請求 今後の論点 考えられる主な法的論点 ①各種会社資料の閲覧謄写請求 ②臨時株主総会の招集決定 ③総会検査役の選任 ④委任状争奪戦 ⑤株主総会運営 ⑥株主総会決議の取消し等の訴え 終わりに はじめに 最近はどこ…

オイシックスによるシダックスに対する異例な公開買付け - 創業家一族とユニゾン/シダックスの対立?

はじめに 背景 ユニゾンが応募契約を締結しなかった理由 オイシックスの反論 今後の見通し はじめに オイシックスがシダックスに対してディスカウントTOBを開始した。通常、ディスカウントTOBは特定の第三者から株式を取得することを目的として実施されるも…

東芝を巡る物語 - 第二次入札までを振り返る

はじめに 背景事情その1:東芝の不正会計 背景事情その2:東芝の不透明な総会運営 2021年4月:CVCからの買収提案 2021年5月:戦略委員会の設置 2021年11月:戦略委員会の推奨を受けた3社分割案 2022年1月:株主からの中止提案 2022年3月:臨時株主総会の実施…

村上ファンドvsジャフコの行く末 - 近時の有事の買収防衛策に関する裁判例を踏まえて

はじめに 近年の買収防衛策の潮流 典型的な買収防衛策 裁判所の判断枠組み ジャフコの案件の帰趨 北関東の弁護士の(どうでもいい)雑感 はじめに いわゆる村上ファンド系列のファンドである株式会社南青山不動産及び株式会社シティインデックスイレブンスの…

お詫びとしての「200円」じゃ気が済まない?-KDDIの通信障害に基づく補償について

仕事にかまけて、久しぶりの投稿になってしまった。高頻度でブログを投稿している人を尊敬しつつ、話題となっているKDDIの返金対応が公表(以下参照)されたため、今日はこの点について契約約款を確認しながら検討していきたい。なお、いつものことであるが…

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任③

昨日のエントリーの続き: businesslaw-diary.com 今日は、5.会社との間の補償契約について考えてみよう。会社との間の補償契約とは、(1)取締役の訴訟等対応費用、又は(2)取締役が第三者に対して支払う損失額や和解額を会社が負担する約束のことである…

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任②

昨日のエントリーの続き: businesslaw-diary.com まずは3.取締役会の決議に基づく責任の一部免除について検討したい。これは定款に「取締役会の決議がある場合には取締役の責任を一部免除できる」との規定がある場合に、取締役会の決議により取締役の責任…

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任①

東京地裁は、福島第一原発の事故に関して、東電の旧経営陣に対して合計13兆3000億円の支払いを命じる判決を下した。この判決は、東電の旧経営陣に対する民事上の責任を認める始めての判決であることはもちろんのこと、その13兆円という莫大な損害賠償を認め…

ソーシャルメディアから考える参院選⑤

NHK党については、ちょっと凄すぎて表現が難しい。まずは今回の選挙についていうと、ガーシーこと東谷義谷氏がNHK党から出馬して当選したが、東谷氏は約28万票を獲得しており、これは参政党の神谷氏の15万票を大きく上回る。東谷氏のメインの視聴者が40代・5…

ソーシャルメディアから考える参院選④

続いては参政党である。参政党はYoutube、Twitterではなく、TikTokで人気を獲得したという報道が多い。実際にTikTokで参政党のハッシュタグがついている動画の総再生数は9700万回程度であり、驚異的な数字となっている(参考までにごぼうの党のハッシュタグ…

ソーシャルメディアから考える参院選③

ごぼうの党と言えば、多くのインフルエンサーとのコラボだろう。筆者が調べた限り、ごぼうの党がコラボを行ったインフルエンサーは以下のとおりであり、総計すると500万回再生を超える。一部視聴者が重複しているとはいえ、相当な数字である。 インフルエン…

ソーシャルメディアから考える参院選②

今回の検討では、特に今回の選挙で話題になった参政党、NHK党及びごぼうの党を中心に、比較対象先として、SNSに力を入れていると言われている国民民主党をピックアップした。 まずは比例の獲得議席数、政党得票数と各SNSの登録者数を、党ごとにまとめてみた…

ソーシャルメディアから考える参院選①

悲喜こもごもの参院選の結果が出た。自民公明は過半数を参院でも確保し、維新等を含めた改憲派の政党が3分の2を超えたらしい。今後改憲に向けて議論を進めるとのニュースが早速流れている。法律家として改憲に関する自分の考えをいつかまとめたいと考えてい…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感⑤

③については、議論がずれてしまっているように思う。確かに、公認に係る利益を認めるための法的枠組みについては様々なものがあり、民主的な過程で決めるべきことであろう。しかし、本件の本質的な問題は、法律婚ができないことにより生じている公認に係る利…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感③

さて、大阪地裁が立法裁量の中で何を論じているかというと、 ①法律婚の配偶者間の法的権利義務等は、事実婚のパートナー間の法的権利義務等と異なるが、事実婚のパートナーも当事者間の合意で、一定の範囲においては、同様の法的権利義務等を実現できる ②そ…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感②

他方で、内容を見ると、少しいただけないところが多い。まず判断枠組みが憲法論として違和感を感じる。大阪地裁は大きく分けて、①婚姻等の制度は法律において定めることを規定した憲法24条2項、②平等権を定める憲法14条1項との関係で、同性婚を認めないこと…

同性婚を認めない民法等の規定を合憲とする大阪地裁の判決を読んだ雑感①

2022年6月20日、大阪地裁で同性婚を認めない民法等の規定を「合憲」とする大阪地裁の判決(大阪地裁平成31年(ワ)第1258号)が下された。2021年3月17日に札幌地裁で同性婚を認めない民法等の規定を「違憲」とする札幌地裁の判決がくだされたが、大阪地裁は先…