ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

司法修習生は何を勉強すべき?各論編(2022年版):英語の話す聞くを勉強すべき

昨日のエントリーの各論:

 

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昨日は修習生は勉強をする習慣をつけろ、と偉そうに述べた。ただ、それだとあまりに抽象的なので今日のエントリーでは私がおすすめする勉強科目をお伝えしたい。

 

まずは、英語、特に話す聞くの英語だ。私は事務所に無理を言って留学させてもらった。私は1年留学すれば英語を「ペラペラ」になれると信じていた。しかし、その妄想は残念ながら見事に裏切られた(事務所の皆さん大変すいません。。)。1年ちょっとの英語では話す聞くは全く伸びなかったのだ。

 

しかし、たとえそうだとしても、行く前と後を比べると話す聞くは少しではあるが確実に伸びた。あと2、3年間アメリカに住んでいれば、話す聞く話す・聞くの勉強を続ければ、日本の弁護士会においては相当程度英語力のある人間とみなされるという感覚がある(だからといってもネイティブのように話せるとは思っていない)。

 

では、日本に戻ってきた今、英語を伸ばすことができるのか?答えるはできるだ。正直ロースクール留学では話す機会はそれほどにない。聞くといっても授業を聞くくらいだ(半分も分からなかった)。その面でいうとロースクールで英語が伸びたという感覚はない。自分の英語が伸びた理由は、留学中もオンライン英会話を地道に続け、海外のドラマを英語字幕で観て(今でも全く分からない)、携帯のアプリで発音練習を続けたからだ。しかも、これを1日3時間、4時間続けたのではない。1日1時間程度これらの勉強をつづけただけだ。それでも、(僅かではあるが)英語力は伸びた。オンライン英会話、海外ドラマの英語字幕での視聴、発音練習の全ては日本でできる。1日30分は英語の勉強をする時間はどんなに忙しくても捻出できるはずだ(捻出できないときもある)。

 

英語能力の話す聞くについていえば、修習生の皆さんが思っているよりも、日本の弁護士のレベルは圧倒的に低い。大学までの教育を海外で受けたという特殊な事情がない限り、最前線で働いている弁護士もペラペラとは程遠いのではないか。したがって、英語が話せる、聞ける人材はブルーオーシャンだ。しかも、英語が話せる、聞けるは1年、2年という単位で身につくものではない。5年、10年レベルの超長期間の時間を投資する必要がある。すなわち、参入障壁が非常に高く、一度そちら側に行けば英語ができる人材として重宝されるだろう。なるべく早く英語ができる側の人材になるために、英語の勉強は可及的速やかに始めることをお勧めする。

 

ここで、そんなのテックで解決されてしまうのでは?と疑問が湧く。私としては、答えはNoだ。想像してみて欲しい。戸田奈津子氏を介して、トム・クルーズと仲良くなれるだろうか?国際会議の参加者は信頼関係が築けているだろうか。私が思うに、同時通訳がいたとしても、信頼関係を築くのは難しい。したがって、テックの力でほぼ同時通訳と同じことが実現したとしても、それだけでは信頼関係を築くのは難しいと思うのだ。前回のエントリーでも書いたが、信頼関係を築けた人が自分の依頼者になる。そのため、ただ話すことができる聞くことができるでは依頼者を獲得という観点からは物足りない。信頼関係が築けるだけの英語力が必要なのだ。そのためには、自らで英語を話す・聞くことができるというのが大きな助けになると思うのだ。(なお、そうすると英語力関係なしにコミュ力が高ければ、依頼者を獲得できるということになるが、それはそのとおりだと思う。ただ、語学が通じない中、プロフェッショナルな意味で信頼関係を築くのは相当に難しい)

 

ちなみに、英語の読み書きについては、日本の弁護士の能力は圧倒的に高い笑。ロースクールでも同期の四大出身の弁護士は圧倒的な読み書き力を発揮し、(私と同じくらいの話す聞くのレベルのくせに)優秀ペーパー賞を受賞し、成績優秀者で卒業していった。悲しいがそういう人はいるのだ。しかし、そんな四大出身の彼・彼女も話す聞くは他の日本人と大差はなかったのだ。したがって、話す聞くは頭の良し悪しに関係ない。いかに英語を使ったかに大きく依存しており、だからこそ修習生には英語の勉強を始めて欲しいのだ。

 

しかも、読み書きこそテックでほぼ解決済みだ。DeepL等を上手に使えば、私のようななんちゃって留学生と遜色のない英文を書くことができる。また、DeepLで翻訳してしまえば、ほとんど日本語で書かれた物と変わらないスピードで複雑な文章を読むこともできる。また、業務で使う英語は限られているので、これこそ実務に入って実地で学んだ方が効率がよいので、修習生はあまり気にする必要はない。

 

英語ができるようになると大きく選択肢が広がる。企業法務の弁護士であれば、どこにいっても重宝されることは間違いない。日本に投資したいという依頼者を獲得することや、海外の弁護士と仲良くなり依頼者を紹介してもらうということもあるだろう。外資系企業のインハウスや、場合によっては外資系事務所に入所・転職することも十分可能であろう。海外で働きたければ、インハウスとなり日本企業の海外支社で働きたいと申し出たり、日系の事務所に就職し海外オフィスで働かせてもらうというのも十分に可能だろう。一般民事をするにしても、昨今外国人絡みの問題が増えている。彼らに寄り添い、彼らの助けになるためには英語ができることが大きな力になるはずだ。

 

以上、英語ができない弁護士が英語の効用を頑張って書いてみた。私もつらい思いをしながら英語の勉強を続けており、自分の可能性が広がっていることを感じるとともに、もっと若い時から勉強しておけばよかった、、と強く思っている。今はインターネットでなんでも格安で学べる素晴らしい時代だ。この時代を十分に利用し、若い人たちと切磋琢磨して自分の英語力を伸ばしていきたい。

明日以降は元気があればさらに具体的にどうやって英語を勉強するかについて書きたい。