ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

13兆円の損害賠償の行方 - 東電旧経営陣が負う経営責任①

東京地裁は、福島第一原発の事故に関して、東電の旧経営陣に対して合計13兆3000億円の支払いを命じる判決を下した。この判決は、東電の旧経営陣に対する民事上の責任を認める始めての判決であることはもちろんのこと、その13兆円という莫大な損害賠償を認めたことから大きな注目を集めている。

 

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この判決一つをとっても多くの論点があるが、今回は約13兆円という損害賠償の支払いを命じられた場合、本当に、本当に、旧経営陣は全額支払う必要があるのかという点に絞って考えてみたい。

検討に入る前にいくつかこの検討の前提について話したい。一点目としては、この東京地裁の判決は、まず間違いなく上訴されると考えられるので、今後上級審が異なる判断を下す可能性があるが、この検討では東京地裁の判決が確定したことを前提として議論したい。また、本来的には事故当時の規定が適用されるはずであるが、頭の体操のための検討なので(あけっぴろげに言うと過去に遡って規定を確認する余力がない。。苦笑)、現在の法令・内規等が適用されることを前提に検討したい。

さて、まず大前提として、会社法上、取締役は、いわゆる善管注意義務を会社との関係で負っており、誠実に会社経営をすることを求められている。この善管注意義務に違反した場合、取締役は会社又は第三者に対してそれらが被った損害を賠償する責任を負うのであるが、会社経営という性質上、この損害額は大きくなることが多い。そのため、会社法は取締役の損害賠償義務を限定するメニューをいくつか定めている。具体的には、以下のとおりである。

  1. 総株主の同意による責任免除(会社法424条)
  2. 株主総会の決議に基づく責任の一部免除(会社法425条)
  3. 取締役会決議に基づく責任の一部免除(会社法426条)
  4. 会社との間の責任限定契約に基づく責任の一部免除(会社法427条)
  5. 会社との間の補償契約(会社法430条の2)
  6. 役員等賠償責任保険契約(会社法430条の3)

では、このメニューのうち、今回はどれを使うことができそうか?

まずは、使えなそうなものをピックアップしてみよう。1.及び2.については、株主(の多数)が旧経営陣の責任を免除することに同意することは、この社会的状況を踏まえると、まず考えられない。したがって、今回の検討から外しても問題ないだろう。次に、4.については、会社法は、会社との間で責任限定契約を締結することができる者を社外取締役等の業務を執行しない取締役等に限定している。旧経営陣は業務を執行する立場にあったと考えられるので、この線もまずないと考えられるだろう。

したがって、残りの3.5.及び6.が現実的な選択肢になると考えられる。明日以降はそれぞれの選択肢について一つ一つを検討していきたい。

今日はこんなところで。。

なお、取締役の責任について検討においては以下の書籍がお勧め。さすが中村先生という感じですよね。

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