ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

オイシックスによるシダックスに対する異例な公開買付け③ - コロワイドによるフード関連事業の買収提案

はじめに

シダックスの件で新たに続報が出ましたので今日は少しだけこの件について書きたい。これまでのシダックスの件のエントリーはこちらから。

 

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日経の記事:コロワイドによる買収提案

まずは日経の記事*1。これによると、シダックスの意見表明報告書で言及されていたアライアンス候補がコロワイドであったことが判明し、コロワイドが6日に改めてシダックスのフード関連事業の買収提案をしたようだ。

www.nikkei.com

この件のインプリケーションとしては、シダックスの取締役からすると、オイシックスとコロワイドのいずれかを比較検討をする必要性が高まり、おいそれとオイシックスの提案に賛成できないことが明らかになったということだろう。昨日の反対意見の裏付けができ、説得力が高まった、ということだ。

また、ユニゾンからすると、コロワイドの買収提案がインサイダー情報に該当する可能性がある、との主張が一定程度根拠づけられることになる。すなわち、オイシックスはコロワイドの買収提案はインサイダー情報に該当しないと主張していたが、その最大の理由はコロワイドの買収提案が既に撤回等されたものである、ということだ。今回のコロワイドの買収提案により、コロワイドの買収提案は撤回等がされていない現在も有効なものであることが根拠づけられた。そうだとしても、コロワイドの買収提案がそもそもインサイダー情報に該当するかは疑義があると私自身は考えているところであり、ユニゾンの旗色が悪いことには変わらないように思う。詳細は前回のエントリーを参照されたい。

ユニゾンによる応募方針の公表

また、9月6日、ユニゾンもオイシックスによる公開買付けの応募方針について明らかにした。内容としては、インサイダー取引規制違反のおそれがなくなること及びシダックスが賛同意見表明することの条件が揃わなければ応募しないというもので、これまでの開示資料から明らかにされていたことを自らの口で繰り返したこととなる。

www.unisoncap.com

この公表の真の意図は分からないが、外野から見ると少し悪手なようにも見える。なぜなら、創業家からユニゾンに対する保全の訴えが提起されるリスク、そして、その保全の訴えが認められるリスクが一定程度高まったと思えるからだ。すなわち、裁判において、将来の不利益に対する救済を求めるためには、将来の不利益が生じる蓋然性が高いことを証明する必要がある。仮に、ユニゾンが戦略的に曖昧な態度をとり続けていた場合、ユニゾンが応募するか否かは公開買付期間の終了まで待たないと分からず、創業家としても保全の訴えを提起するかは悩ましいところだっただろう。しかし、今回のように、オイシックスが反対意見を表明した後、ユニゾンが自らの口でシダックスが賛同しなければ応募しないことを明示してしまうと、ユニゾンが株式を売却しない可能性が相当程度高い(なお、理論上はシダックスが意見を変える可能性がる)ため、創業家としても保全の訴えを起こしやすく、また、保全の訴えを起こした場合に認められる可能性が高まっているといえるのではないか。なお、ユニゾンの方針は既に別の開示資料から読み取れるところであり、実際にユニゾンの開示がどこまで裁判に影響を与えるかは分からないが、創業家の心理上及び裁判上不利に働く可能性があるのは間違いがなく、あえてこのような公表をする必要があったかは疑問が残るところだ。

シダックスの反応

これに対して、現時点ではシダックスは何も反応していない。前回のエントリーで説明したとおい、シダックスからコロワイドから買収提案があったとの内容を開示してしまうと、この情報がインサイダー情報の対象から外れてしまうので、この件の詳細を開示することはないように思われる。

今後の見通し

前回のエントリーに比してさらに創業家がユニゾンに対して訴訟を提起する可能性が高まったのではないか。人間味あふれる泥試合になってきたが、今後の展開に注目したい。

*1:本論と外れので脚注にしておくが、、この日経の記事はどうなのであろうか。。率直に言って論旨が不明確かつ不正確である。これならよっぽど有名ツイッタラーの解説の方が有益ではないか。