ビジネスロー・ダイアリー

中年弁護士の独り言兼備忘録

Rights of first offer? Rights of first refusal?

新年の抱負

久しぶりの投稿になってしまった。忙しくてブログから少し遠ざかると、すぐにブログを書く習慣がなくなってしまう。今年は月一(願わくば月二)でM&A関連トピック、法務トピック又はその他の雑トピックを書いていきたいと思う。

今回何を書くか迷った挙句、あまりいい話題が見つからなかったものの、先日久しぶりに株主間契約をドラフトする機会に恵まれたので、株主間契約絡みの話題、特に紛らわしいRights Of First Offer(ROFO)とRights Of First Refusal(ROFR)について書いていきたいと思う。

前提

株主間契約はある会社の株主の間で締結されるもので、主に合弁会社、共同投資の場合に用いられる。その内容は、株主間契約を締結する場面により異なるものの、当事者が保有する株式の処分方法については多くの株主間契約で規定されている。株主間契約が締結されるような場面では、株主が変更されることは想定されていないが、仮に株主が変更した場合、株主間の関係だけでなく、発行会社の運営等にも影響する。このように株主の変更は合弁会社の運営等にも影響を及ぼす重要な事象であることから、保有する株式の処分については、多くの株主間契約で規定されているのであろう。保有する株式の処分に関するルールの一つが冒頭で紹介したROFOとROFRだ。

例えば、AとBがそれぞれ51対49の割合で合弁会社Xを設立した場合を考えて欲しい(=X社の株式の保有割合はA51:B49)。合弁設立後、数年間はXの成長に尽力していたものの、Xの運営方針の違い又は財務状況等から、Bが保有する株式を処分する場合を考えてみよう。Aからすると、Bが見ず知らずの第三者CにX社の株式を売却してしまった場合、AはCとX社を運営することになってしまい、当初の想定と異なりいくつもの不都合が生じる可能性がある。このような状況を回避するために、Aが行使できる権利がROFOとROFRだ。

ROFOとROFR

ROFOは、その名の通り、先行してOfferをする権利である。上記の例を用いると、BがCにX社の株式を売却しようとした場合、まずはAに対してお伺いを立て、Aに株式購入のofferをする機会を与える必要がある。この場合、AがofferをするかどうかはAの裁量であり、Aはofferをしないこともできる。

ROFRは、refusalをする権利であるが、その語感からはどのような内容か少しイメージがしにくいと思う。上記の例を用いて説明すると、BがCにX社の株式を売却しようと考えた場合、BはまずはCとの間で売却条件を詰める。その後、Aに対して、「Cと決めた条件」でBからX社の株式を購入するかお伺いをたてる必要がある。このように実際にはAがCに優先して(BC間で詰めた条件で)X社の株式を購入できることから、日本語では先買権と呼ばれている。

ROFOとROFRの違い

上記の説明だけではROFOとROFRの違いについて今一ピンと来ていないと思う(かく言う私もそうだ)。そこで、もう少しこの違いについて説明させてもらいたい。

ROFOの場合、BはCと交渉を始める前にAにお伺いを立てればよいため、Aに興味がなければ、BはCとの間で株式の売却交渉ができる。Bからすれば、まずはAと交渉する必要があるという一定のハードルがあるものの、その手続きを踏みさえすればCに売却することは可能である。

しかし、ROFRの場合、Cとの交渉が先行する。したがって、Aが株式を購入することになった場合、BC間の交渉は水泡に帰してしまうし、Cの立場からすると、Bと交渉したとしても結局Aに買われてしまう可能性があるので、そもそもBと交渉したいとは思わないだろう。したがって、ROFRは、ROFOに比して、そもそも売却候補相手が見つけるのが困難という側面があるため、売却のハードルが実務上相当程度高くなると考えてよい。

このことから、ROFOは譲渡希望株主(B)有利の条項で、ROFRは残存株主(A)有利の条項と言われている。

まとめ

名前と機能が似ているだけに混同されがちの両者であるが、株式譲渡のハードルという面では大きく異なる。将来自らが株式を譲渡する可能性の大小を見据えて、いずれの条項を選択するか検討すべきであろう。

インターネットの世界では株式譲渡に関する条項の解説はあふれているものの、株主間契約に関する条項の解説は未だ十分ではないと思うので、これから少しずつ株主間契約における条項の解説をしていきたいと思う。